菊地雅章

CD Black Orpheus

Black Orpheus

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    hiro  |  愛知県  |  不明  |  2016年04月20日

    菊地雅章(1939年〜2015年)は、我が国を代表するジャズ・ピアニスト。 盟友、日野皓正との双頭コンボで日本ジャズ界を牽引した後、Gil Evansなど多くの海外ミュージシャンと共演を重ね、信頼を得ると共に、Miles Davisに拮抗しうるエレクトリック・ジャズの傑作と謳われた「SUSTO(1981年)」で世界を驚かせるなど、その活動は常に注目を集めてきました。 ピアノ・トリオのファンには、Gary Peacock(b)、Paul Motian(ds)との「TETHERED MOON」の諸作品も忘れられないと思います。 この「Black Orpheus」は、2012年10月26日、東京文化会館で行われたコンサートの記録。 日本人スタッフの手になる音源が、オスロのRainbow StudioにてManfred Eicher、Jan Erik Kongshaugによりミックスダウンされ、ECM作品としてリリースされました。 全11曲で、約71分。アルバム・タイトルでもある「Black Orpheus」は、Luiz Bonfa作曲、映画「黒いオルフェ」の主題歌となった「Manha de Carnaval」。それ以外は全て菊地のオリジナルです。 中間部で演奏される「Black Orpheus」とラストの「Little Abi」を除き、曲名が「Tokyo Part I」から「Tokyo Part IX」となっていますので、この日のソロ・パフォーマンスはインプロヴィゼーション主体であったようです。 冒頭から張り詰めた空気が会場を覆っており、このアルバムを外国人が聴けば、あたかも禅の瞑想の世界のように感じられるかもしれません。 しかし、極めて硬質なサウンドでありながら、何故ここまで惹きつけられるのか?。それは、菊地が紡ぎ出すピアノの旋律に、詩情が溢れているからだと思います。 全体を通して言えるのは、緊張感が最後まで持続しているということ。 菊地の心象風景が綴られているのか、心の中に忍び寄るしっとりとした曲もあれば、暗闇を疾走していくような曲、あるいは幾何学模様をイメージするような曲もあります。 時に空間を切り裂くような音も現れ、聴く側には集中力が要求されますが、基調がリリカルであるが故の心安らぐ瞬間が何度も訪れます。 特に心に染み入るのは「Black Orpheus」。このボサノヴァの名曲が、一旦は解体され、そして美しく再構築されていく過程を、当日の観客と感動を共有して聴くことができると思います。 音の煌めきを掬い上げるように奏でられる「Tokyo Part IX」は、このアルバムのベスト・トラック。 愛娘に捧げた「Little Abi」は、アンコールでしょうか。その優しげな旋律から、プーさんの笑顔が目の前に浮かんでくるかのよう。 ブックレットに飾られた菊地あび撮影のフォトに音が重なり、心に刻まれた深い余韻はいつまでも消えることがありません。

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