もはや何の説明もいらないヴィンテージ・アルバムである。学生だった私は、「蜃気楼の街」「いつも通り」で、大貫妙子の楽曲の魅力に惹きつけられた。以来、半世紀にわたって、彼女の楽曲を愛聴してきている。リリックな詞と洗練された曲調が彼女の楽曲の大きな魅力である。美しく透明感のある歌唱も、歳を重ねながら円熟味を増している。 　ボーナス・トラック1曲目「夏の終りに」は、アルバム『SONGS』を発表する2年前に、シュガー・ベイブが一番初めに作ったオリジナル楽曲だそうだ。正規録音ではないDemo版しかないが、私はこの楽曲がたまらなく好きだ。2024年10月6日放送のサンデー・ソングブックで紹介された「1974年8月24日の千葉セントラルプラザ7階ホールでのシュガー・ベイブのライヴで一番印象に残った曲」というリクエスト理由に、私は強く共感した。山下達郎はこのリクエストに対して、「渋い！」とコメント。「君と僕の終る今は つるべ落しの秋の始まり」 青春の儚さを湛えた詞や疾走感のある曲調に私は強く惹かれる。メンバーたちが演奏しながら複雑で難しいバック・ボーカルを歌っているところもすごい。山下達郎の多くの名曲の中でも、「雨は手のひらにいっぱい」「2000トンの雨」「スプリンクラー」など、初期の頃に多かった若くペシミスティックな心情を表現した楽曲に、私は特別な魅力を感じている。 　今回の50th Anniversary Edition では、1994年に行われた SINGS SUGAR BABE LIVE の録音が初出となった。演奏と歌唱の水準が高く、音質も良いので、おおいに楽しめる。

長年続いているラジオ番組でも達郎さんの音質へのこだわりには感服するものがあります。時代を経ても、全く色褪せない名曲の数々。素晴らしいです。

こうしてAnniversary Editionが10年周期にだされていることが名盤の証明でもあります。　内容は日本のポップミュージックの理想形といっても良いのではないでしょうか。